【池井戸潤さん作品】七つの会議の主観、雑感
ざっくりというと、
一つの大きな事件の真相の裏側を
関係七人の目線からそれぞれ語られるスタイルで、
内容は半沢直樹シリーズを感じさせるような組織内の秘密を暴いていくもの。
この本が、面白いのは、
七人の生い立ちから、家族構成、この企業に就職したきっかけ、など、それぞれの登場人物の性格形成がされた背景が盛り込まれていること。
登場人物の七人が、どう生きていきたいと思って、今にいたるのか、その人がコンプレックスに感じている所や、原動力となるもの、それらが複雑に絡み合って、この事件は成り立っている。
おそらく、読者のだれもが、
七人のいづれかの登場人物に感情移入するのではないだろうか。
わたしの場合、新田という男に感情移入した。
生い立ち含め、性格やものの考え方など、感情移入せざる得なかった。
彼は幼少期より両親から何不自由ない生活を与えられており、努力する必要もなく、常に自分の意見が1番優先させる環境で育った。故に、自分の意見が通らないこと、思い通りにいかないことに対して、ただならぬ怒りを感じる。自分が正しいと思ったことには、周囲の反対を無視して突っ走る。
ある意味、とても純粋なのだ。
今回の事件も、彼は隠蔽工作を暴く立場であり、単なる好奇心と正義感で行動していただけである。しかし、彼の行動が裏目にでてしまい、ついには左遷され、妻にも愛想を尽かされてしまう。
彼が重大になにか悪いことをしたとは思えない。彼が何か悪いことをしただろうか?
あるとすれば、タイミングの悪さや報われない正義感、そして、いつも自分が正しいと信じ、人に頼らず生きてきた彼の人生が全て裏目にでてしまい、会社からも家族からも見放されてしまう。
人を信じたり頼ることを知らなかった新田は、皮肉にもこの事件をきっかけに、自分には信じてくれる家族もいなく、いざという時に助けてくれる会社の上司もいない、ということを知るのであった。
すこし、話が膨らみすぎてしまったが
自分を新田に置き換えると恐ろしい。
この本でわたしが感じたのは、
事件そのものというより、事件が起きたことによって浮き彫りになる人の本性だ。
わたしもこういう機会があったら
新田のようになってしまうのではないか、そう思うと、ただただ、今の日常が愛おしく思えてくる。
- 作者: 池井戸潤
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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